失敗しない為のノウハウマガジン 独立開業塾

「成功Aさん、失敗Bさん」その1

「AさんとBさんは幼なじみの親友です。Aさんが脱サラして独立準備をしているときに、たまたまBさんも退職して独立を目指すことになりました。

Aさんはいろいろなフランチャイズ本部の話を聞き比べて、ある宅配ピザの加盟店になることにしました。そこは業界では中堅クラスの本部でしたが、今まさに伸び盛りのところで、Aさんはその熱気を感じて一緒にやりたいと思うようになったそうです。

Aさんはその本部と契約を交わし、1カ月の研修に入りました。それと並行して、本部と一緒に出店候補地を探しました。「競合のないところに出店すると楽ですよ」という本部のアドバイスを参考に、Aさんは住まいの隣の県にある人口15万人の市に店を出すことにしました。その町には、まだ宅配ピザが1軒も出店していなかったのです。

Aさんの開業資金は3000万円。内訳は、本部に払う加盟金と保証金が200万円ずつで合計400万円、内装、看板、厨房機器で1200万円、バイク7台の購入費が230万円、その他の開店費用(アルバイトの募集、研修、調理器具、ユニフォームなど)が320万円で合計2150万円、物件購入費が260万円(20坪で賃料20万円、保証金10カ月、礼金1カ月、前家賃1カ月、仲介手数料1カ月)で、2410万円が一気に出ていきました。

Aさんの手許には590万円が残りましたが、Aさんはこれを「開業予備費」として大事にとっておくことにしました。もしも不測の事態が起きて、売上げが立たないうちに出費が必要になったときのためです。また、これだけの金額が手許にあれば、計算が狂って自分の給料が取れないようなことになっても、生活費の心配は当面ありません。

実際は、開店すると大盛況。本部のモデルケースである月商700万円を、初月からクリアしてしまいました。Aさんは本部と相談して、近隣に2号店、3号店を出す計画を進めています。


さてBさんですが、Aさんの成功を見て、自分も宅配ピザをやろうと考えました。ただしAさんの加盟した本部ではなく、業界トップの本部を選びました。Bさんはトップブランドの強みがあれば、競争相手にも勝てると考えたからです。

Aさんと同じように加盟契約をしてから研修を経て、Bさんは出店計画に入りました。Aさんと違ったのは、Bさんは自分の住む町の近隣で候補物件を探したところです。Bさんは「近ければそれだけ効率的な仕事ができる」と考えました。いわゆる「職住接近」です。それだけではなく、慣れた場所で商売がしたかった、知らない場所に行くのが怖かったということもあります。

Bさんが決めた物件は、Aさんのものより少し広く、家賃も高めでした。そのエリアは物件が少なく、地代が高騰していたからです。そのためBさんの開業費用はAさんよりもかかってしまい、およそ2600万円ほどになりました。Bさんはその多くを借入金でまかない、自分の手許にはいくらも残せませんでした。

残念ながら、Bさんは苦戦が続きました。見つけた物件の近所には、すでに宅配ピザが2ブランド進出していたのです。Bさんは「競合があってもブランド力があれば勝てる」とふんでいましたが、Bさんの本部は業界トップであることにあぐらをかいていて、新興勢力のようなきめのこまかいサービスを実施していませんでした。おまけに、新しく始めた宅配寿司のほうに本部が注力していて、宅配ピザのサービスが後手に回っていたのです。

Bさんは良くても収支トントン、悪い時は赤字の月が続きました。手許に予備の資金を用意していなかったため、生活費も出せません。「子どもの養育費はどうするの!」と言って、奥さんは子どもを連れて実家に帰ってしまいました。「自分は何を間違ったのだろう」と、Bさんは毎日、溜息をついています。

【解説】
「ブルー・オーシャン理論」という言葉をご存じでしょうか。競争の激しい市場を「レッド・オーシャン」と名付け、それに対比させて競争のない市場を「ブルー・オーシャン」と名付けたものです。ビジネスを成功させたければ、レッド・オーシャンで戦うのではなく、ブルー・オーシャンで戦うことを目指すべきだというのが、「ブルー・オーシャン理論」です。

このAさんとBさんのエピソードは、まさにこの「ブルー・オーシャン理論」そのものです。Aさんが店を出したところはブルー・オーシャンで、Bさんが店を出したのはレッド・オーシャンでした。その結果、経験やスキルがほとんど同じ2人なのに、人生の行方が大きく違ってしまったわけです。

また、開業に当たって手許資金を残したAさんと、残さなかったBさんの違いもじつは大きいのです。自分の生活費が半年ないし1年分確保してあれば、収支トントンが続いても何とか耐えることができます。しかしそれが用意されていないと、新たな借金をしたりすることになります。開業時の忙しい時に、精神的に追い詰められてしまうのは、よいことではありません。

本部選びでもAさんとBさんは違っていました。おそらくAさんはたくさんのフランチャイズ本部を見て回り、どういうところが自分に合っているかを冷静に検討したのでしょう。それに対して、Bさんは業界での順位とブランドの知名度に目を奪われてしまいました。伸び盛りの本部なのか、下り坂の本部なのかは、数字だけを見てもわかりません。たくさんの本部を見比べ、多くの担当者と会っていないと、「熱気」のようなものは察知できないでしょう。

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